▶神奈川県立高校の同窓会の実態調査と考察
他校の同窓会はどんな状況なのか気になることはありませんか?
神奈川県立高校の18校の同窓会について、ホームページ、メール、電話などで聞き取り調査をし、同窓会について考察してみました。母校同窓会の状況と他校との比較もできます。3月21日には、母校で会則の改正に向けて臨時総会が開催されます。これを機会に、みなさんも、同窓会について考えてみてください。なお、解説には調査表では表現しきれなかった内容も掲載しています。(調査期間:2018年1月〜3月)
他校の同窓会の調査内容の詳細は、下記のPDFをクリックしてご確認ください。
【調査表の解説と考察】
■ 事務所の所在地について
校内に同窓会の事務所がないのは18校の中で希望が丘高校、横浜緑ヶ丘高校の2校だけでした。正式に借用申請をすれば同窓会の事務所を校内に置くことは何の問題もないのです。高額な賃借料を払って外に置く理由はありません。
希望が丘高校は、現在、同窓会の事務所がある所は元々高校があった場所で同窓生にとっては懐かしい場所であるということでした。横浜緑ヶ丘高校は、高校が坂の上で高齢の方が坂を上るのが大変なので、バリアフリーを考慮して平地に事務所を設けたそうです。事務所は会員からたいへん廉価な賃借料でお借りしているということでした。
ほとんどの高校が校内に事務所を持つことを会則に明記しており、止むを得ず高校を離れた2校についても、明確な理由がありました。簡単に校外に移るべきではありません。多くの同窓生が母校を離れたくないと思っているのではないかと思います。
■ 同窓会の目的
どの会も、会員相互の親睦、母校の発展、地域貢献のみならず広く「社会」への貢献を目的としていました。同窓生の会費でなりたっているのですから、生徒への支援や地域への貢献よりも会員相互の親睦を第一に考えるべきです。
目的を達成するために、どんな事業を行い、どのような年度目標を設定してPDCAを回すか、また、役員や担当者の権限と責任を、あらかじめ決めておく必要があると思いました。
■ 同窓会の組織
一部の代表と役員だけが取り仕切るのではなく、できるだけ多くの会員が参加できる開かれた組織にする必要があります。同窓会の事務局を作ってまとめている高校もありました。
明確に会計監査を置いている高校もあり、同窓会が明朗な会計を行っているか、間違った方向に進んでいないかを第三者の立場から監査することの重要さを痛感しました。
ボランティアだけが集まった仲良し集団でなく、同窓会の目的を達成できる資質を持った経験を積んだメンバーを選び、権限と責任を明確にした組織作りが必要です。ボランティアだけで会を運営していくことには無理があります。
■ 議決権
調査した全ての高校が、一般会員全員が総会に参加できて、議決権も与えられていました。議決を行うときには、民主的な方法が不可欠であり、多数決の原理を損なうことがあってはならないと思いました。同窓会という任意団体では、できるだけ多くの会員が公平な立場で同窓会の意思決定に参加できることが重要だと思いました。
■ 会計年度
全ての高校が通常の会計年度の4月1日〜3月31日でした。会計年度を変えると、活動をする上で、他の組織との連携も難しくなり、弊害の方が大きいと思いました。
■ 会員の資格
卒業生と母校の教職員に同窓会の会員資格が与えられていました。恩師あっての同窓会ということを忘れてはいけないと思いました。お世話になった恩師に同窓会の会員になっていただきたいという思いは、どの高校でも同じだと思いました。
■ 同窓会の会費
年2千円〜3千円が大半でした。中には、5年で5千円、1万円で終身会員という高校もありました。額の多少だけでなく、支払いの方法を工夫している高校が多かったです。どの高校も、会員が会費を払うことの納得感を醸成するために、定期的な講演会、ゴルフコンペなどのイベントの開催や会報やホームページを充実させるなど知恵を出し合っているようでした。横高は、記恩館という立派なセミナールームがありますので、定期的な講演などを実施しやすいと思いました。
■ 有償の広告掲載
広告の募集と掲載は、ほとんどの同窓会は行っていませんでした。会報誌に広告を掲載している会もありましたが、募集範囲は同窓会員に限定しており、会員同士の仕事や趣味等での交流促進が目的であり、新たな財源確保のためではありませんでした。バナー広告などの有償での広告の掲載は、営利事業とみなされ課税対象になります。また、営利を目的としないという同窓会本来の活動目的から離れてしまうため慎重に対応する必要があります。
■ 会報の発行
会報は、どの高校も、年に1回〜2回発行しています。会報は同窓会にとって母校や同窓会の歴史を残すため、同窓会に情報を提供するための重要な媒体です。同窓会は会報の発行のためにあると言っても過言ではありません。
会報はホームページとは役割が違うもので代替できるものではありません。特に、高齢の同窓生はホームページを見る手段を持たない方も多く、会報が唯一の会との窓口となっていて会報を楽しみにしている同窓生も多いのです。
ネットがどんなに普及しても会報の価値はなくなリません。会報が読めるから会費を払っているという同窓生も多いと聞きました。
会報の発行は、同窓会の活動の柱の一つとして、会則に発行規約を明記して確実に実施する必要があります。
■ ホームページ
ホームページは、重要な情報伝達手段となっていました。それぞれの高校が工夫をこらして同窓生自らがホームページを内製しており、外部の業者に委託していた高校は、横浜翠嵐高校と同窓会を財団法人にしている希望が丘高校の2校だけでした。
同窓会がホームページ作成講座を用意して編集できるメンバーを増やす活動をしたり、複数人のホームページ担当が自宅からメンテナンスできる機能を取り入れている高校もありました。特に、吉田庫三先生が初代校長を務められた兄弟校とも言える小田原高校のホームページは、リニューアルが行われ、大変に充実した素晴らしい内容になっていました。
ホームページを外部の業者に委託すると高額な委託料が発生し、会員の個人情報を外部に出すということにもなるので、個人情報漏えいを防ぐために、信用のできる業者選定と業者と確実に機密保持の契約を締結する必要があります。
また、同窓会は、重要な活動として会員の住所や電話番号などの個人情報の管理を行っているのですから、外部委託するかどうかに関わらず、プライバシーポリシーをホームページに公開する必要があります。
■ 終わりに
「朋友諸子は、現今社会の風潮に安んじてはならん。軽騒を喜んで、一時の楽しみに身を任せてはならん。その風儀は温雅に、お互いの情は厚くして、多言に惑(まど)わされることなく、自ら卓絶せるものを持つこと、それが、わが朋友諸子の特質である。
終始一貫して、質実、欺(あざむ)かずに息(やす)まなければ、その心は自然と周縁に及ぼして、朋友の願いを成就(じょうじゅ)させるところ、計り知れないものがある・・・」
吉田庫三先生が、朋友会を創設されたときに述べられた言葉だと云われています。(記恩ヶ丘掲示板)「社会の風潮に流されず、相手を思いやる心を持って、正直に公明正大に、みんなで協力して運営していくことの重要性」を説いています。この言葉を精読して、朋友とは何なのか、同窓会はどうあるべきなのか、朋友会が110年の伝統を継承しつつ、新しいステージに上るためにはどうしたら良いのかということを、原点に戻ってもう一度、みなさんで考えてみてください。
また、朋友会の臨時総会が行われます。今回は、朋友会の会則の大幅な改正が議案として提出され審議されます。お彼岸のお忙しい時期ですが、ぜひ、懐かしい母校のセミナールームに足をお運びください。
【朋友会 臨時総会】
・日時:2018(平成30)年3月21日(水・祝)14時〜16時
・場所:横須賀高校 記恩館セミナーホール
・案件:会則の改正、その他報告
・住所:横須賀市公郷町3丁目109
http://www.yokosuka-h.pen-kanagawa.ed.jp/contents/zennichi/c7/index.html