シニアのためのコンピュータ・セキュリティ入門

スマホが手頃な値段になって使いやすくなりました。シニアの方にとっては、画面や文字が大きいスマホの方が、かえって使いやすいという意見もあります。そこで、最近は、ガラケーからスマホに乗り換えるシニアたちが増えてきています。しかし、ハッカーは、スマホに乗り換えたシニアたちを標的にしているという報道がありました。今回は、最近のセキュリティ事情とウイルスに感染しないための注意事項をまとめました。

コンピュータウイルスは、風邪のウイルスのようにパソコンに侵入して、ファイルを壊したり、異常な動作をさせたりするプログラムです。当初は、イタズラ目的に作られていましたが、最近は、ネットを使った詐欺のツールに使われるようになってしまいました。

最近、ランサムウェア(Ransomware)という名前のウイルスが世界中で猛威をふるっています。ransomは身代金という意味で身代金要求型コンピュータウイルスと訳されています。パソコンなどのコンピュータのデータを暗号化して、その開錠と引き換えにお金を要求してくる悪質なウイルスです。

昨年の2月に、米国のロサンゼルスの病院がランサムウェアに感染して電子カルテなどのシステムがロックされ、電子的な情報の共有ができなくなった事件が起こりました。病院の機能が麻痺して人命に関わるため、暗号を解除するために、病院はビットコインという仮想通貨で1万7000ドル相当を支払いました。今年に入ってからも同様な事件が増え続け、世界100カ国以上で数十万台のコンピュータがランサムウェアに感染したと言われています。
※ビットコイン:ビットコインは実体を持たないインターネット上で管理される電子データの通貨です。別銀行や海外への送金がスピーティで手数料が安いのが特徴です。

ランサムウェアは、企業や政府機関だけでなく、個人が使っているパソコンやスマホにも攻撃の矛先が向けられています。子どもの成長を記録した写真などは、ご家族にとっては、お金には変えられない貴重なデータです。パソコンをウイルスに感染させて写真データなどを暗号化して見えなくした後に、「写真を見たければ金を払え」と理不尽な要求をしてくるのです。

最近は、Amazonギフト券などのプリペイドカードがコンビニで簡単に手に入り、そのカードを使ってネットで買い物ができるようになりました。犯人は、このような手軽な新しい決済手段を悪用して身代金を奪取するようになったのです。

ランサムウエアの手口を、個人への攻撃を例にして説明しますと次のとおりです。

① 犯人が、個人のパソコンにランダムにスパムメールを送りつける。
※スパムメール:「空飛ぶモンティパイソン」という英国のコメディ番組の中のSPAMという缶詰を大量に送りつけるシーンが語源です。

② メールのリンクや添付ファイルをクリックさせてパソコンをウイルスに感染させる。

③ ウイルスがファイルを暗号化した後に、暗号を解くためにギフト券を購入して暗証番号を送れと身代金を要求する。

④ コンビニでギフト券を購入し犯人にカード番号(暗証番号)を送ってしまう。

このようにして犯人は電子マネーをまんまと手に入れてしまいます。ギフト券は少額ですが、同様の犯行を繰り返すことで大きな儲けを生み出しています。犯人にカード番号(暗証番号)を送ったからといって、約束したとおり暗号を解除してくれる保証は全くありません。

ランサムウェアの手口

身代金要求型ウイルス対策は、風邪と同じで特効薬はありません。感染を防ぐためには、日頃から地雷を踏まないように気を付けること、基本的なセキュリティ対策を地道に実施することしかありません。

【ウイルスに感染しないための10か条】

① ウインドウズアップデートやソフトウエアアップデートを確実に実施する。
② 貴重なデータは、万が一に備えて、ハードディスク、USBメモリやSDカードなどに保存しておく。
③ パソコンの拡張子を表示するように設定して、EXEファイルは開かない。
④ パソコンにはウイルス対策ソフトを入れる。転ばぬ先の杖。
⑤ 怪しいメールの添付ファイルやリンクを開かない。
⑥ 実在の会社を装った偽装メールに注意。
⑦ 知人からのメールも送信元が偽装されている場合があるので注意。
⑧ ネットでID・パスワード、クレジットカード番号などを聞かれたら100%詐欺。
⑨ メールだけでなくLINEやFacebookなどでもメールと同じ注意が必要。
⑩ メールアドレスをホームページやFacebook、Twitter、掲示板などに載せない。

実在の会社(AMAZON)を装った偽装メール

インターネットは便利です。ホテルや飛行機の予約も、公共料金の振込みも、書籍の購入も簡単にできます。でも、この操作が現金で買い物をするのと同じだということを忘れがちです。インターネットを使う時は、ネット上のお金を狙っている輩がいることを意識して、騙されないように細心の注意を払う必要があります。

一方、最近は個人情報保護や権利保護に過剰反応して情報の公開を拒んだり隠蔽したりする風潮があります。インターネットという便利なツールもこれでは宝の持ち腐れです。

ジャーナリストの立花隆さんは、20年前に、「インターネットは、グローバル・ブレインになる」と言いました。人類の営みの中で、今世紀最大の発明と言われているインターネットというツールを、安全に便利に使っていきたいものです。(高25期 廣瀬)

【参考資料】
・ランサムウェアに感染した病院、身代金要求に応じる ITmedia 2016年
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1602/19/news063.html
・フィッシング対策協議会
https://www.antiphishing.jp/
・IPA 情報処理推進機構(情報セキュリティ)
https://www.ipa.go.jp/security/index.html
・IPAのランサムウェアの記事
https://www.ipa.go.jp/security/ciadr/vul/20170514-ransomware.html
・インターネットはグローバル・ブレイン 立花隆 講談社 1997年

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