イタリア人に学ぶ働き方改革

働き方改革と言われていますが、なかなか難しいですね。イタリア人の生き方に解決策のヒントがあるのではないかと思います。(高25期 廣瀬隆夫)

海外旅行好きの友人から、これからはイタリア人の生き方に学べと言われました。イタリア人というと、脳天気な人が多いとか、マイペースだとか、時間にルーズだとか、あまり良い印象はありませんでした。友人は、それでもイタリア人が好きだというのです。ヨーロッパ旅行はイタリアしか行かないという。どこにそんな魅力があるのだろうか。そんな折、ふらりと寄った本屋で「アモーレの国イタリア」という本に出会いました。読んでいると、生き方の基本的な考えが日本人とイタリア人では全く違っているということが分かりました。

日本の会社は昼休みが1時間だが、コンビニ弁当を10分で掻き込んで、あとは昼寝して時間をつぶしている人が多い。昼飯は午後からの仕事をするためのガソリン補給ぐらいにしか考えていない。最近は、働き方改革とやらで減ってはいるが、残業や休日出勤も多い。月曜日は定時より30分早く出勤して営業ミーティングをやるという決まりを上司が勝手に作っても文句を言う部下は少ない。仕事が終わって飲み屋に行っても仕事の話が延々と続いている。休日は疲れ切ってごろ寝で過ごす。偉くなればなったで週末は、会社の金で接待ゴルフ。日本のサラリーマンの生活は仕事中心に回っている。

イタリア人は、ランチのために昼休みを2、3時間とるのは普通。奥さんが作った料理を食べるために自宅に帰る人も多い。おしゃべりをしながらゆっくりと楽しみながらランチをとる。とうぜん、定時になったらさっさと会社を出てアフターファイブを楽しむ。夏季休暇やクリスマス休暇などに長期休暇を取る人が多い。有給休暇が溜まって消化できないなんてことは考えられない。残業という言葉すらない。仕事だけでなく毎日のプライベートな生活も楽しんでいる人が多い。

だからと言って、仕事をないがしろにしているわけではない。給料よりも、仕事の質や、やりがいを重視する。どんなに給料が高くても退屈でつまらない仕事は人気がない。だから、経営者も、事業を拡大するだけのために無闇に会社を大きくしようとしない。質の高い、おもしろい仕事ができる分野を追求していく。入社試験でどんなに筆記試験で良い点をとっても、会社に入ってやりたい夢を語れないような人は入社が難しい。イタリアの経営者の多くは、事業を通して自分の独創的な考えや夢を実現させて社会に貢献することを最重視している。

こんな内容の本でした。

イタリア人が、自分の楽しみや幸せというものを人生の中心に置いているところが日本人の人生観と一番違うところだと思います。結果だけでなくプロセスを楽しむという考えも日本人には欠けていると思います。何のために働いているのかと聞かれて、お金のためと答える日本人が多いと思います。イタリア人に聞いたら人生を楽しむため、と即答するでしょう。また、人生100年に手が届く時代です。会社をリタイアした後の時間が長いのです。この時間も有意義に使って楽しみたいものです。

日本では、働き方改革が叫ばれていますが、闇雲に残業を削減しようと言うだけでなく、根本的な考え方を変えていかないと難しいと思います。「これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」という論語の言葉がありますが、あくせくしないで、”仕事や生活を楽しんでいる”イタリア人に学ぶべきことが多いと思います。退屈な仕事は、AIやロボットに任せて人間は、よりクリエイティブな楽しい仕事をする方向を目ざすべきだと思います。

最後におまけで小話を一つ。

湖で釣りをしているイタリア人に日本人が話しかけた。
イタリア人の竿には、なかなか、あたりがない。

日本人「ここの魚は賢いんだ。もっと仕掛けに金をかけなきゃ釣れないよ」
イタリア人「私は、魚釣りを楽しんでいるのだよ。そんなに釣ってどうするんだい?」
日本人「たくさん魚が釣れれば、女房も喜ぶし、魚屋にも売れるじゃないか」
イタリア人「たくさんは食べられないし、第一、そんなにお金を稼いで、どうするんだい?」
日本人「そのお金で良い仕掛けを買えば、もっと魚が釣れるからに決まっているじゃないか」

クーラーボックスが一杯になるまで、必死になって魚を釣っている日本人の横で、
イタリア人は、湖面を流れる心地よい秋風に吹かれながら、のんびりと釣りを楽しむのでした。

---------------------------------------------------------------
アモーレの国イタリア タカコ・半沢・メロジー著 中公文庫 2005年

 

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です