シニアのためのIT用語早わかり解説(1) クラウドコンピューティング
技術の進み方が激しいIT業界では、新しい単語が次々と出てきます。そこで、シニアの方のために、IT関連の用語の説明をしていきたいと思います。第一回目はクラウドです。
クラウドコンピューティングとか、クラウドサービス、クラウドソーシングなど経済新聞や雑誌に、最近クラウドという文字がさかんに出てきます。クラウドとは、Cloud、まさに雲のことで、雲をつかむという言葉がありますが、そのように良くわからないのではないかと思います。
クラウドという言葉を最初に言い出したのは、皆さんが検索によく使っているグーグルという会社の最高経営責任者だったエリック・シュミット博士です。2006年8月にカリフォルニアで開かれた「サーチエンジン戦略会議」の中のプレゼンテーションで使いました。シュミット博士は、グーグルに入社する前は、SUN(スタンフォード・ユニバーシティ・ネットワーク Stanford University Networkの頭文字)マイクロシステムズという会社にいました。スタンフォード大学の卒業生が作った会社です。今は、オラクルという会社に買収されてしまいましたが、シリコンバレーにあったITを代表する会社でした。
SUNマイクロシステムズは、Windowsの元祖のようなUNIXというオペレーションシステムを開発していた会社で、電子メールやサーバなどの今のインターネットの基本的な仕組みは、この会社が作ったと言っても過言ではありません。インターネットは、ネットワーク同士が複雑に絡み合った形をしており、それを詳細に描くのは大変なので、その頃のネットワーク研究者は誰でもインターネットは雲の絵を描いていました。シュミット博士は、これを、クラウドと呼んだのです。
クラウドの中には、ネットワークだけでなく、情報を格納するサーバと呼ばれる入れ物や、様々なサービスを提供するコンピュータも含まれています。こういう、複雑なまとまりを、ブラックボックスにしてクラウドと呼んだのです。クラウドは、インターネットそのものでもあり、明確な定義がありませんので、知ったかぶりしてクラウドと言っても大丈夫です。
実は、この画面が煩雑になるのを防ぐために雲の形で隠して描くという手法は、日本では古くから存在していて「すやり霞(すやりがすみ)」と呼ばれています。昔の錦絵や浮世絵を見ると、細かい絵が省略されて霞や雲の形が描かれています。細かすぎて説明できないものはモクモクとした雲の形にして臨場感を出すという手法を日本人は大昔からやっていたんですね。この浮世絵をエリック・シュミット博士が見たら先を越されたと驚くでしょうね。