▶個人情報保護の過剰反応をしていませんか?
同窓会の総会に行きましたら、司会から個人情報を保護するために写真撮影を禁止すると言うアナウンスがありました。何で個人情報?と思いました。出席できなかった仲間に総会の雰囲気を伝えたかったのでガッカリです。その同窓会のホームページを見ましたらイベントで写した集合写真の顔のところに全部モザイクをかけてあって、誰だかわからなくてなっていました。これでは集合写真を掲載している意味がありません。これも個人情報の保護だそうです。さらに、個人情報の保護のために同窓の会員名簿も一切提供しないと言うのです。ずいぶん窮屈で、おもしろくない世の中になったなと思いました。
そんなことを考えながら、Googleで個人情報の保護について調べていましたら、個人情報の過剰反応という記事がたくさん出てきました。2005年に、個人情報保護法が施行されてから、町内会の名簿を作れないようにしたり、国勢調査の情報を提供しないなどの過剰反応をして問題になっているという記事でした。日本各地で起きていて大きな社会問題になっているんですね。特に、東日本大震災で、個人情報保護法の解釈の間違いがネックになって要援護者の情報が迅速に公表されず、救助に支障が出たことがあったようです。
個人情報保護法を読むと第1条に”個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する”と書いてあります。プライバシーを守るために個人情報を大切に扱う必要があるのは当然ですが、同時に個人情報の有用性にも配慮する必要があるということなんです。個人情報の利用・提供を止めてしまうと社会生活に支障が出てしまい、法の趣旨に沿ったものではないということです。
【個人情報保護法の概要】
http://www.johokokai.metro.tokyo.jp/kojinjoho/hogohou/index.html
そこで、個人情報保護法をもう一度、じっくり読んでみました。個人情報の安全管理について書いてあるだけでなく、個人情報を利活用するときのルールがかなり詳細に書かれていました。例えば、個人情報を第三者に提供する場合には、本人の同意を得ればOKと書いてあります。本人の同意がなくても、個人情報を第三者に提供できるオプトアウトなどの特例も定めています。その個人情報の有用性を損なわないような配慮がたくさん書かれていました。これを読んで明るい気持ちになりました。個人情報保護法は、会議で写真を撮影したり、顔写真をホームページに掲載したり、名簿を作ったりすることを禁止しているのでなく、個人情報を適切に管理して、手続きを踏めば個人情報を大いに活用すべき、と言っているんです。窮屈で、不便な世の中にしているのは、法律を理解していない人たちの過剰反応のせいだったんですね。
世界では、第4次産業革命とも言われている、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいます。「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。単純作業や手間のかかる作業は出来るだけ機械にやらせて、人間は、モノを考えたり、楽しい企画をしたりという人間本来の仕事にシフトしていこうという考え方です。
日本は、このDXが遅れていると言われています。シンガポールや香港、お隣の韓国の方がはるかに進んでいます。先進国の中でかなり下位の方ではないかと思います。DXの普及を妨げているのが、とにかく情報を出さなければ安全、という、この個人情報保護の過剰反応ではないかと思っています。ステーキのレアーは食中毒が心配だからと食べないのと同じです。適切に調理をすればおいしくいただけるのです。
”Data is the new oil.”という言葉があります。個人情報を含んだビッグデータは、今後、ますます増えて、将来、これらの情報は石油のように重要な資源になると言っています。”個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する”という法律の本来の意味を理解して、安全で便利で楽しい世の中にしたいものです。皆さんも、個人情報の保護について、もう一度考えてみてください。きっと、明るい未来が見えてきますよ。(高25期 廣瀬隆夫)
【参考】
http://www.asahi-pub.co.jp/dosokai_hogoho.pdf
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201703/1.html
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/personal_report_2003caa_kajohanno.pdf