▶残された吉田庫三校長の2枚の肖像写真

小田原高校と横須賀高校には、それぞれ、吉田庫三校長の肖像写真が残っています。厳しい中に生徒たちに向けた暖かい眼差しが分かる良い写真です。2枚とも、写真の右手の下に本が置いてあり背表紙の文字は「神道叢記」もしくは「神道叢説」と読めます。ネットで調べましたら、「神道叢説(しんとうそうせつ)」という本が国立国会図書館デジタルコレクションに収録されていました。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1024869/10

「神道叢説」1911(明治44)年11月30日発行 発行所 図書刊行会 著者 山本信哉 非売品
https://ja.wikipedia.org/wiki/山本信哉

この本は非売品なので、どのようにして入手されたのかは分かりませんが、儒教・仏教などの影響を受ける以前の日本民族固有の精神に立ち返った復古神道に関連する著書を網羅的に収載した本のようです。神道由来紀(占部兼直)、神道簡要(渡会家行)、神道大意(吉田兼倶)、神道伝授(林羅山)、神宮続秘問答(出口延佳)、神道四品縁起(橘三喜)、神道或問(多門正玄)、神道天ぬ矛記(井澤長秀)など神道諸派の中の代表的な書46部が載っています。漢学に精通していないと全く歯が立たない難解な内容です。吉田庫三校長は漢学について造詣が深く、本格的な神道研究をされていたことが分かります。

2枚の肖像写真を比べると、写真館で撮影したのか横須賀高校の写真には背景がありません。両方とも、本の上に腕を置いたポーズで、背表紙が見えるように肖像写真に写されているということは、吉田校長にとって重要な本だったのではないかと思われます。当時は、先生も学生服を着るのが慣例だったようで吉田校長も学生服を着ています。生徒との区別を付けるためにヒゲを生やしていた先生が多かったそうですが、吉田校長には髭がありません。校長は吉田松陰の甥であることなどは、あまりお話にならなかったそうです。生徒たちに偉そうに振る舞うことが好きではなかったのかも知れませんね。この2枚の写真は、いつ、どこで撮影されて、どのような経緯でそれぞれの高校に残されたのか良く分かっておらず、謎に包まれています。

【小田原高校の吉田庫三校長の肖像写真】(小田高同窓会のHPより)

【横須賀高校の吉田庫三校長の肖像写真】(横高 校史資料室より)

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