▶横高校歌「天がける白雲」のエピソード
横須賀高校には2つの校歌があります。一つは、坂東武者の名を留めしで始まる横中校歌、もう一つは、天がける白雲かの横高校歌です。(高25期 廣瀬隆夫)
1947(昭和22)年に施行された学校教育法に基づき、横高も旧制中学から新制高校に変わりました。その時、坂東武者では女子が歌いにくい、新しい時代にそぐわないのではないか、という意見が出て、新しい校歌制作の気運が高まりました。
新しい横高校歌の制作は、歌詞を教師や在校生から公募するということから始まりました。当選したのは、1位が高校2年だった三和義彦さん(高7期)、2位が中川鋭三郎校長が書いた歌詞でした。最終選考で三和さんの歌詞が選ばれました。中川校長の薦めで、その歌詞を藝術院賞も受賞された当代随一の作詞家である三好達治さんに見てもらい現在の歌詞になりました。作曲を團伊玖磨さんにお願いして1954(昭和29)年に横高校歌「天がける白雲」が完成しました。
作曲家の團伊玖磨さんに校歌作曲の依頼の経緯については、音楽の担当だった五十嵐(青山)光子先生が、出身校の東京藝術大学で團伊玖磨さんと同級生であったこと、團伊玖磨さんが、戦後は秋谷に住んでおられたということで作曲を依頼されたそうです。
1989(平成元)年の創立八十周年記念式典が横高で開かれた時に、團伊玖磨さんがご講演されて、その時にこんなことを言われたそうです。「この高校には、昔から良い校歌がある。今度の校歌は三和さんの歌詞にあった新鮮な曲とした」
<<横須賀高校校歌「天がける白雲」>>
歌詞原作:三和義彦 歌詞補修:三好達治 作曲:團伊玖磨
一、天がける白雲か 日に新た我らの望み
はてしなき青空よ ここにして道を学ぶと
記恩ヶ丘に我らつどひぬ
いざさらば道の友垣 誉ある歴史のうへに
新しき行手を求めん
二、学び舎の窓清し ここにして我らの願ひ
高く秉る灯火よ その光明るく冴えて
記恩ヶ丘に絶ゆることなし
いざさらば道の友垣 明日よりはさらに励まん
かへらぬ日今日を惜しみて
三、朝あけは近づけり 人の世に生きゆく力
若き日の情熱よ さしのぼる朝日子のごと
記恩ヶ丘に光はみてり
いざ往かん道の友垣 風そよぐ緑の園を
二つなき思ひ出として
出典:創立百周年記念誌「百年の風」
2位の詞が新制高校初代校長中川鋭三郎先生の作品だったことは初めて知りました。2位の詞をご存知の方がおいでになりましたら公開いただけると有難いです。幻の第三の校歌を作ってみたいです。
英語担当だった中川鋭三郎先生は定年退官後、上町(旧町名中里)にあった「向学会」という塾を主宰されていました。今だったら考えられませんが横高の多くの先生方が夜や休み中に協力されていました。お世話になった方々は多いかも知れません。
中川鋭三郎先生は熱血な方で、チョークの粉が付いたままの手で私の腕を掴んで「君の才能をこれからもずっと伸ばしていきなさい」と激励していただきました。
横須賀中央の平坂を上がり切った右角にたこ焼き屋さんがあって、塾は脇の路地の先だったので先生方からよく買いに行かされました。3個10円でしたが5円しか持っていなかった時は5円で2個くれました。
「天がける白雲」からそんな想い出が蘇りました。
皆様には差し支えなければYouTubeからご高聴いただいて「チャンネル登録」と「いいね」をいただけると有難いです。