▶車でカラスを轢きそうになった5秒間(高22期 伴野 明)
つい最近の出来事です。
町田街道を駅に向かって走っていました。この道はよく通る道です。普段から交通量は多いけど道幅が狭いので、全体的に車はゆっくり走っています。
前方が100mほど空いたタイミングがありました。市役所に用事があった私は少しスピードアップしましたが、何かが遠くの路上にあります。
0秒――30m
「ん、……」、30mほど先の道路上に、はっきりと黒い物が見えてきました。
「カラスだな」、それはすぐにカラスと分かりました。
「カラスが道路上の黒い物をつついている」と状況が理解できました。
「もうちょっと近寄れば飛び去る」、50年も車に乗っていれば何度もあったシチュエーションです。
1秒――20m
全然カラスが反応しない。「おいおい、気づいてないのかよ、鈍いか図々しいかどっちかだな」私は図々しい方を取りました。
「気づいている筈だから、逆に加速すれば、ビビッて逃げる」と思い、目立つように加速しました。
「ブウン」エンジン音も聞こえたはずです。
2秒――10m
依然としてカラスは反応しない。「おいおい、何なんだおまえは」、逆にこっちがビビリました。
「これじゃ轢いちゃう」、焦ってブレーキを踏みました。
スピードが落ちるとカラスが何をしているか、分かりました。黒い物は何だか分かりませんが、ウインナーソーセージが潰れたような感じに見えました。必死でそれをつついているんです。この距離でも車を意識していない。あるいは無視しているのか。
3秒――5m
「止まるしかない!」
一瞬ですが、「頼むから逃げてよ」と思いました。
同時に「止まっても逃げないのでは?」とも思いました。そうなると堂々と道路で食事をしているカラス、「おじゃましてスミマセン」の私、その絵が浮かびます。
「スローでギリギリまで詰めてみる」それしかない。
4秒――1m
「当たる瞬間まで距離を詰めよう」、50cm……まだ動かない。
かなり近づいたこの瞬間カラスの体に目が行きました。「ウワッ、痩せてる……ガリガリじゃん」、そのときカラスが初めて私を見たように思えました。悲しい目をして、首をちょっと傾けて。
「逃げないんじゃなくて逃げられないのか……」図々しいカラスと、それにムカついた私、の構図がひっくり返りました。
5秒――30cm
「飛んだ!」カラスが遂にジャンプ、ジャンプというより、歩道まで少しハネただけでした。
着地したカラスは横になったままで動けません。
車は、ほとんど止まったようなジリジリ速度になっていました。私は車を止めてカラスを助けようか、迷いました。
助ける―――助けるって、拾い上げて介抱するのか?で、その後どうするの?
無視する――これは事故じゃない、私に責任はないのだから、このまま行っちゃおう。
受け入れる―カラスの寿命だったのさ、それが今だっただけ。
一瞬ですが、この三つが頭の中をグルグル回りました。
「プ、プー、プー」後の車の大きなクラクション音に「ハッ」と我に返りました。
私はカラスを見ないように正面を向いてアクセルを踏みました。
用が済んだ帰り道、カラスは見当たりませんでした。
カラスではなく車について。私はきっと運転免許をとらないまま人生を終えることになりますが、伴野さんはプラモデルレーシングカーの権威だし、車もよく運転なさるようなので、ひとつお伺いしたいことがあります。
米国は先ごろ、EV(電気自動車)以外は将来禁止する、との規制を緩めて、HV車やPHV車も容認するようです。私は愛国心旺盛なので、世界に冠たる日本の「内燃機関」が「モーター」に取って替わられるなんてとても許せません(トランプ氏の「bloodbath」発言もEV批判のゆえ)。
そこで知りたいのは「回生ブレーキ」のこと。世界を席巻するトヨタのHV(ハイブリッド)車は、エンジンとモーターの両方で走れ、しかもモーターを動かすリチウムイオン電池に「回生モーター」で充電するというスグレモノです。
EVの弱点のひとつは、小型で大容量の蓄電池開発が難しいので、走行距離を伸ばそうとすると大きくて重い蓄電池を載せなければならず、重い車体が走行距離を縮め、タイヤや道路の損耗を早めることにあります。
が、最大の弱点は、ガソリンと違い持ち運べない電気を充電するための施設があちこちに必要になることでしょう。狭い日本ならともかく、延々と砂漠や荒野が続く米国でのガス欠ならぬ電欠は死につながる。広く普及するとはとても思えません(市内を走るだけの用途は別)。
そこへゆくとPHVは、ガソリンでも走れるので、充電式蓄電池もEVより小さくできるという、ガソリン車とEVの「良いとこ取り」らしい。
そこで知りたいのは、PHVの蓄電池は「回生ブレーキ」で充電できる仕組みなのか否か。いろいろ調べても解説が見つからないのです。ご存じでしたらご教示ください。
「回生ブレーキ」とは下り坂で、ガソリン車であれば(特にマニュアルギヤ車)アクセルを踏まない状態(エンジンブレーキと呼ばれます)で、ブレーキを踏んでいないのに、少しブレーキ感を感じるでしょう、それをモーターで同じような効果をもたらす機能です。しかし車を運転されないとなると実感でピンと来ないかもしれません。
いちばん分かりやすいのは、模型屋で売っている模型用の直流モーターです。
モーターの±リード線に乾電池を繋ぐと回ります。どちらかの線を電池から離すと、ちょっとの間、惰性で回って止まります。ではもう一度モーターを回し、その離した線同士を接触させてください。
さきほどはちょっと惰性で回ったモーターが、びっくりするほど「ビュッ」と瞬間で止まります。それが「回生ブレーキ原理」によるものです。
走っていた電気自動車が電気が来なくなっても惰性で走る、その時持っていた運動エネルギーをブレーキとして利用する、模型モーターの実験と同じ事です。
さらにモーターをブレーキだけでなく電気回路で発電機として電圧を上げれば電池の充電も可能となります。
仮に12ボルトの電池であれば、発電した14ボルトの電源を繋げば、単に電圧の高い方から低い方へ電流が流れ込みます。
電池と名の付く物は種類に関わらず、「回生ブレーキ」システムで充電できます。
早速ありがとうございます。ということは、PHVの蓄電池も「回生ブレーキ」での充電も考慮した「大きさと容量」になっている訳ですね。
EV・PHV・HVそれぞれの蓄電池の大きさと重さ、容量などまでは、まさかご存じないですよね。
各電池のスペックは車の大きさと用途次第で決まるので、個々については分かりません。
「回生ブレーキ」での充電は電池のスペックに関わらず、過充電にならないよう制御されているはずです。
BEV(単なる電気自動車)の場合は航続距離を伸ばすため電池の大型化、重量増が進んでいます。確かにガソリン車に比べて200kgも重くなれば、タイヤが異常に減るとか道路が目立って傷むとか、思いがけない問題が出てもおかしくないでしょう。
ここに来てEV(BEV)が問題になっていますが、元日産自動車社員の私としては、世界がEV一本に進むなんて「寝ぼけているのか?」と思っていましたが、目が覚めてきたようです。
EVが売れたのは、EVに初めて乗った人がモーターとエンジンの動力特性の違いを知らないため、「ウワッ、すごい加速」と驚いたのが理由でしょう。なので、オモチャとしては良いが実用性を考えれば今の時点では使い物にならないのです。