▶「ドライフラワー」(高22期 高橋克己)

早速、仏壇、玄関、洗面所、居間、自室に活けた。小さな蕾も数日で大人のこぶし大に開き、それからほぼ1週間ほど満開の状態を保ったのち手のひら大にまで拡がって、花びらを落として行く。花の持ち具合は光に左右されるようで、一番暗い仏壇の「白」が最後まで頑張った。

医師の話では「抗生剤と血圧を上げる薬を処方した。薬が効けば1週間程度で退院の可能性もあるが、高齢(91歳)でもあり予断を許さない」とのことだった。拙稿に書いた通り、障害者控除の申請が4月に遡及して適用されることになり、叔母の年金で今後の一切が賄われることになっていた。

つまり、長年働いた叔母が自ら稼いだ糧の範囲で、誰にも頼ることなく余生を送れるように漸くなったということ。折角、千葉の施設や役所の方たちも親切に手続きを進めて下さったのに。それからというもの、「便りがないのは良い便り」とはいえ、日に何十回もスマホを確認する日が続いた。

そんな中、当然のことながら部屋の「一輪挿しの白」が目に見えて弱って行く。この「白」と一緒に叔母が散ってしまったら、とも思えてくる。そこでこの「白」を4年前に挑戦して成功した「ドライフラワー」にすることを思い立った。ちょうど以前のそれには欠けが目立っていたし。

病院の容体連絡から1週間目の5月17日、「ドライフラワー」が完成した。その日の午前、病院に電話して叔母の様子を聞いた。「その後は嘔吐もなく、血圧も低めだが安定している。ベッドや車椅子に座るリハビリも始めた。が、食が細く点滴をしているので退院はまだ先」とのことだった。

自作の「ドライフラワー」でも、丁寧に扱えば何年でも持つ。叔母もそうあって欲しい。

    ▶「ドライフラワー」(高22期 高橋克己)” に対して1件のコメントがあります。

    1. 加藤麻貴子 高22期 より:

      叔母様のために大切にしてドライフラワーにする、その想いと心が通じて病状が快復したのでしょう。
      今年はフリージアが沢山咲き、思い立って何輪かドライにしてみたところ、ひと月以上経ってもきれいな黄色を保っています。何かの折にいただく花束をドライにして作り直すと、いつまでもその花束に纏わる思い出が蘇り、心が温かくなります。ドライフラワーにすると云っても、自然に任せての乾燥です。
      渡辺雅江さんの芍薬は見事ですね。私も一度いただいたことがあります。毎年頂くとは羨ましい限りです。

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