▶朝鮮戦争勃発の日に(高22期 高橋克己)

朝鮮戦争は、外形上は北朝鮮と連合国軍の戦争ですが、実質的には米韓と北中ソの戦いでした。日本も連合国軍の兵站に多大な貢献をしました。横田基地に今も翻る国連旗はその象徴です。「朝鮮特需」によって終戦間もない日本の復興は大いに加速し、警察予備隊が自衛隊に衣替えするきっかけにもなりました。

「北中ソとの戦い」と書いたのは、朝鮮戦争でソ連が武器弾薬の支援と軍事顧問の派遣に加えてパイロットも動員していたという公然の秘密を、プーチンが23年7月の北の戦勝記念行事に送った祝辞で殊更に暴露したからです。そのとき私は、その話を持ち出して北にロシアへの兵の派遣を要請したのだろうと直感しました。

中露は19年12月16日、22日に帰国期限を控えた北朝鮮出稼ぎ労働者規制を含む安保理決議2397号の解除を国連安保理に提案しました。結果は米国が拒否して否決されましたが、斯く国連制裁で出稼ぎすら規制している北朝鮮に兵士の派遣を求めるなど言語道断です。これらのどれ1つとってもロシアに安保理常任理事国たる資格はありません。

■朝鮮戦争と在中国朝鮮族との関り

ここで台湾を引き合いに出した理由の一つは、朝鮮戦争当時の「自治州」の人口が50万人であり、台湾の終戦時の人口が約6百万人だったから。共にこの70余年間で約4倍になった勘定です。因みに、朝鮮半島の人口は45年の25百万人から77百万人(韓国51百万人、北朝鮮26百万人)へと約3倍増です。

その「自治州」から朝鮮戦争に中国志願軍として多数の朝鮮人が参加していました。

モスクワ関係大学のアナトリー・トルクノフ教授に、朝鮮戦争を北朝鮮・ソ連・中国の間で遣り取りされた電報から分析した「朝鮮戦争の謎と真実(金日成・スターリン・毛沢東の機密電報による)」(草思社01年刊)という著書があります。その中でトルクノフは、要旨次のように書いています。

-銃器類は大部分が国民党軍からの戦利品で口径がばらついているため、特に小銃、機関銃の薬莢の製造に支障が生じている。よって51年1月から小銃14万丁(薬莢58百万個)、自動小銃2.6万丁(薬莢8千万個)、TNT火薬1千トン(以下略)の供給が可能かどうか検討願いたい。-

ここで毛が嘆いている支障の中身が、北朝鮮からロシアに何百台だかのコンテナで送られた武器弾薬の不具合とそっくりなので、改めて失笑してしまいました。

さて、中国共産党中央委のソ連共産党代表コウリョワも49年5月17日、毛沢東から、満洲に50万の朝鮮人がいて朝鮮人師団(一師団1万人)が二個師団あり、うち一個師団には満州で国民党軍との実戦経験もある、これらはいつでも北朝鮮に派遣できる、と金一にした話を聞き、モスクワに伝えています。

「自治州」の朝鮮人二個師団の2万人は、20万以上ともされる中国志願軍の1割足らずですが、朝鮮語が使える彼らが様々な形で役に立ったであろうことは容易に想像できます。ですが、数年前まで同胞だった朝鮮人同士が数十万単位(民間も含めれば数百万単位)で殺し合うほど凄惨なことはありません。

最後に「自治州」に絡めて台湾を引き合いに出した別の理由を述べます。蒋介石は朝鮮戦争勃発3日後の6月28日、33千人の朝鮮派兵を米政府に申し入れました。マッカーサーは賛成でしたが、彼の対中原爆使用案と共に、中国との全面戦争を懸念したトルーマンに退けられ、マッカーサーは解任されます。こ出来事をプーチンは知っているでしょうか。 おわり

    ▶朝鮮戦争勃発の日に(高22期 高橋克己)” に対して2件のコメントがあります。

    1. 廣瀬隆夫 より:

      ニュースで流れている出来事は、必然性があって繋がっていて、東西冷戦は、まだ終わっていないことがよく分かりました。

      1. 高橋克己 より:

        歴史を勉強する醍醐味の一つが、正にそこなんですよ。

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