▶左派メディアにも老いたバイデンの退陣論(高22期 高橋克己)
11月5日の投票を左右するバイデンvsトランプの1回目の討論会がジョージア州アトランタで27日21時(現地時間)から、途中2度のCM休憩を挟み90分間にわたって行われました。私は28日朝9時過ぎからPC桟敷で準備を整え、開始時間の10時に備えました。
米大統領選に最近凝っている友人にLINEで指南をしながら、「Newsmax2」の動画を見始めると、英語なので何を言っているか判らないとこぼす友人に、「先ずは二人の表情や態度を見たら良い、後で字幕入りの録画番組が組まれるので、字幕を日本語に設定してもう見直せば内容が理解できる」と伝えました。
こうして始まったCNNの画面は偶さか2分割され、左にトランプ、右にバイデンの表情を映し出します。始まって直ぐ、トランプの発言を聞くバイデンの表情の異様さが目に付きました。呆けたように口を半開きにし、瞬きもせず右目を少し吊り上げたり、眼を閉じて下を向いたりするです。
『ワシントンフリービーコン』(WFB:親トランプ)は「For Whom the Split Screen Tolls(誰がために分割画面は鳴る)」との秀逸な見出しで報じました。ヘミングウェーの「For Whom the bell Tolls」のもじりで、「分割画面はバイデンのため(の弔鐘)」とばかり退陣を促しているのです。なかなか洒落ています。
■
この余りに無残なバイデンの様子には、保守紙のみならず左派紙も仰天したらしく、総じてバイデン退陣論が占めました。以下に討論終了後の左右各メディアの見出しを挙げてみます(私と同様、英語の苦手な方はgoogleやdeeplの自動翻訳アプリで記事をお読みください)。
「Debate Recap: We Need To Talk About Grandpa(討論会要約: お祖父ちゃんについて話す必要がある)―民主党は悲惨な討論会の後でパニック状態―」(WFB)
「バイデン氏の最大の弱点である年齢が討論会で完全に露呈:分析 ―大統領の年齢と虚弱さは、舞台では明らかにマイナスとなったー」(ABCnews:反トランプ)。
「トランプは大統領選討論会で『勝利』しなかったかもしれない。が、バイデンは負けた ―討論会は結果に影響を与えないことが示されてきたが、今回の討論会はその傾向を試すことになるかもー」(MSNBC:反トランプ)。
「トランプがバイデンに圧倒的勝利、2024年の選挙戦に厄介な疑問浮上」(Foxnews:親トランプ)
「民主党は考えられない事態を考えている:バイデン氏が去る時が来た」(Politico:中道左派)
「民主党、バイデンの討論会でのパフォーマンスに激怒『バイデンは終わりだ』」(Politico)
「民主党がバイデンに代わる方法はこれだ ―同党は数十年使われてこなかったルールブックを開示する必要があるだろう、そしてまずはバイデンが撤退することだー」(Politico)
「バイデンの失策がトランプとの論争を支配」(Axios:中道左派)
トランプ「バイデンは勉強し過ぎて自分が何をしているのか分かっていなかった」(Newsmax:親トランプ)
「NYタイムズ社説委員会:バイデンは国のために選挙戦から撤退すべき」(Newsmax)
以上、右から左までの各メディアは、バイデン退陣を要求する見出しで埋め尽くされています。
中でも哀れだったのは、反トランプの急先鋒『MSNBC』のニュースショー「Morning Joe」だ。朝からまるでお通夜のようで、うだうだとバイデンの負けを認めようとしないアンカーのジョー・スカーボローを共同アンカーのミカ・ブレジンスキーがたしなめ、危うく言い合いになる始末。
これに限らずCNNなど反トランプのニュース番組でも、コメンテーターが異口同音に口にするのは「トランプが嘘をついた」の一言。そこで、トランプ次期政権の構想を練っているとされるヘリテージ財団の『Daily Signal』の「討論会の16の主張を検証」なる記事に各主張の真贋が書いてあるので、これも項目だけを以下に紹介しておきます。
1.トランプ、歴史上最も安全な国境があったが今は最悪だ
2.バイデン、トランプは漂白剤を飲むことを推奨していると非難
3.トランプ、「誰もが」ロー対ウェイド判決の覆しを支持した
4.バイデン、「憲法学者はロー対ウェイド判決を支持した」
5.バイデン、トランプはシャーロッツビルで「とても素敵な人々」といった
6.バイデン、インフレは「企業の貪欲さが原因」
7.バイデン、私たちは後期中絶に賛成しません。以上です。以上です。
8.トランプ、バイデンは「中国から金をもらっている」
9.トランプ、「史上最低の税金」
10.バイデン、トランクは「ヒトラーは良いことをした」といった
11.バイデン、トランプは1期でどの大統領よりも財政赤字を増やした
12.トランプ、私の時にイランはハマスやヒズボラに資金援助しなかった
13.トランプ、バイデン政権下で食品価格は「2倍、3倍、4倍に」
14.トランプ、国境を越える麻薬の量は「過去最大」
15.バイデン、10% の関税は価格上昇につながる
16.バイデン、国境警備隊が私を支持
こうしてみると、バイデンには、口籠った末の「メディケアに打ち勝った」発言や上記16発言の数分後に、国境警備隊が「バイデンを支持しない」と「X」にポストするなどの、明らかな錯誤や言い間違えが多い一方、トランプには「嘘」というより「盛り過ぎ」や「断定」が多いようです。
どちらが米国の国益や西側社会にとって深刻かは、先述した「For Whom the Split Screen Tolls」(WFB)の次の一節に表れているように思います。
バイデンのパフォーマンスを観て、その態度を評価していたのは米国人だけではない。習近平、ウラジーミル・プーチン、イスラム教指導者、そして金正恩も視聴していた。そして世界はより危険な場所になった。
おわり
政治にはあまり関心のない私ですが初めてこのような討論会を見て圧倒されました。日本の政治家の10倍くらいのスペードで言い合っているのを見るとの政治はことばを抜きには語れないと思いました。バイデンは少しおかしいこと言っているなと感じたけれど、アメリカのメディアはかなり鋭くそこに評価したと思います。国の将来を託すのだから当たり前ですね。