▶友人を見てその人を知る(高22期 高橋克己)

幸田露伴はかつて「露伴、漱石、鷗外」と称された日本の近代文学を代表する文豪です。露伴の家族では娘の作家「文」が著名ですが、音楽で功績のあった二人の妹「延」と「幸」や成友(1873-1954)という歴史学者の弟もいます。成友は「しげとも」と読みます。

カロンが編んで成友が翻訳した『日本大王国史』(東洋文庫)の序文で、歴史学者の岩生成一(1900-1988)は、「日本滞在二十余年、その間に日本婦人を娶って六子をもうけ、日本語も巧みであって、当代随一の日本語通」とカロンを評しました。彼はウィリアム・アダムズ(三浦按針)に比肩するほど幕府の信任が厚かったのです。

1645年に世に出た『日本大王国史』は、オランダ以外の英独仏伊などでも出版されました。岩生は「極東遥かな謎の国日本を知るための唯一の手掛かりになったようだ」と書いています。同書には、幸田成友の筆になる『フランソワ・カロンの生涯』とカロンの『日本大王国史』が収められています。

私は『フランソワ・カロンの生涯』の一節に成友が記した以下の一文に目を惹かれました。

友人を見てその人を知るということがある。カロンを愛し、信用し、また之と多くの交渉のあった人々の中に、バタビヤ総督ファン・デル・ライン、駐蘭英国公使ジョージ・ダウニング、仏国宰相ジャン・バブチスト・コルベールを見る。三者が有識具眼の人々であることは言うまでもないが、殊にファン・デル・ライン及びコルベールはカロンに対する罵詈悪評を耳にするも、毫も彼に対する信用を変えなかった。彼らがカロンを尊重したことだけで、カロンの価値が十分知られよう。

ファン・デル・ラインを知らなくとも、今も英国首相官邸の街に名を残すダウニングやルイ14世側近として重商主義を推進し、絶対主義に貢献したコルベールの名を知る者は少なくないでしょう。成友は私貿易(いわば横領)で晩節を汚したカロンの治績を、その友人らの名を借りて読者に訴えたのです。

ですが、16年にトランプ大統領が登場してからの米国の政治状況を、NYT、WaPo、CNN、MSNBCなどの反トランプメディア、Fox、Newsmax、WFBなどの保守メディア、Politico、Axios、Hillなどの中道メディアで幅広くウォッチすれば、日本メディアの報道が必ずしも真実を伝えていないことが判ります。

ベン・カーソンに関する拙稿を読んだ知人から、彼の様な素晴らしい人がなぜ品位と人格に欠けるトランプを支持するのか理解できない、とのメールをもらいました。米国の反トランプでないメディアを読む日本人は少ないので、日本のメディアで知る限りのトランプ像はまさに知人のそれでしょう。

そうした矢先に、幸田成友が『フランソワ・カロンの生涯』に記した先述の一節に出会ったという訳です。万人から尊敬され、おそらく歴史に名を残すほど偉大な小児脳外科医が下す評価なら、トランプのことを改めて考え直してみようか、という気持ちになるかも知れません。

果たしてトランプは誰を副大統領候補に選ぶでしょうか。

    ▶友人を見てその人を知る(高22期 高橋克己)” に対して1件のコメントがあります。

    1. 加藤麻貴子 より:

      確かに日本のメディアはバイデン・民主党寄りの報道が多いと思います。私も含めて日本人は(バイデンは優しそう、トランプは怖そう)のような見た目に騙されやすいかもしれません。なのでトランプ批判が多いのでしょう。ベン・カーソンと友人というのはすごいと思います。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です