▶昭和のラジオ・テレビ物語:第3話(高22期 高橋揚一)

【少年ジェット(昭和99年9月)】

♬勇気だ力だ 誰にも負けないこの意気だ ヤア 白いマフラーは 正義のしるし その名はジェット少年ジェット 進めジェット少年ジェーット A・B・C♬
最後は「A・B・C」ではなく「J・E・T」の聴き間違いだった。昭和30年代の小学生に「ジェット」の綴りが「J・E・T」だという知識はなく、カッコ良い英語として「A・B・C」に勝手に聞こえてしまったのだろう。でも「J・E・T」だとしても稚拙な歌詞ではないか。

♬明るく元気で正しい心 如何なる困難危険を越えて 少年ジェットは今日も行く♬
河原で愛犬シェーンとくつろぐ場面。ピーナッツを投げてシェーンが口で受け止め、スクーターに乗って走り出す。『サザエさん』の最後の場面がピーナッツを投げて口で受け止めて「ふんがっふっふ」だったのが「じゃんけんぽんウフフフ」に改められるよりはるか昔のことである。

提供はS&B食品。シェーンがカレールーを買いに行くCMが流れていた。

初期の頃は最後に悪役たちと一緒に楽屋でカレーを食べるCM。プロレスラー俳優の鉄人騎士が「おかわり」と言って力瘤をポクポクさせ、少年ジェット以下皆が「わーすごい」といった感じで番組は終わる。
この場面を真似して、当時の子供たちは家の食卓で「おかわりポクポク」と言って力瘤を出していた。
当時S&B食品から販売された「S&Bモナカカレー」は、カレールウをモナカの皮に包んだユニークな商品。もち米で作ったモナカの皮の風味とトロミがカレーの味を引き立てた。
円筒形の大きな缶が家にあることが少年たちの誇りでもあった。立川談志によるCMでさらに人気を博している。

少年ジェット本人は連載途中でキャストが交替したが、悪役の首領は継続して高田宗彦というハーフの役者が演じていた。独特の訛りが印象的で「うーむゼットめ」との台詞が特徴。雰囲気からソロバンと「さいざんす」で『アベック歌合戦』の司会を務めたトニー谷だと思えたが、勘違い。
初期の鉄人騎士の巻ではスパイのジェームスという役名、次は紅さそり、最後はフランスから来た怪盗なのに名前はブラックデビル。

紅さそりが毒入りジュースを与えて手下にした遊園地で働く青年は、芸人一家に生まれアニマルズの「悲しき願い」や「あしたのジョー」主題歌を歌った尾藤イサオのように見えたがこれも勘違いで無名の役者だった。唯一有名になったのは、子役として初回から出演していた和泉雅子。彼女も女優や歌手から冒険家や僧侶に転身してしまったが。

少年ジェットの最大の武器は「ウー、ヤー、ター」と叫んで敵に旋風を送る「ミラクルボイス」という技。テレビ以前から掲載の漫画『ぼくら』誌では最初は「ワォー」という叫びだった。少年なのにスクーターに乗ったり「スーパーコルト」という麻酔銃を所持していたり、そういった点は同時期の『まぼろし探偵』や『月光仮面』や『七色仮面』などにも共通する。

当時はアニメが流行る前で、多くは稚拙な実写版だった。『鉄腕アトム』も最初は実写版でブリキ製のようなパンツ姿だったが普段はその上に皮ジャンを装備していたかも知れない。毒入りのスイカを食べた人が人間の姿のまま犬になってしまい電話ボックスに逃げた人を襲おうとする場面などがあった。アニメ版より古くさい主題歌も懐かしい。

『月光仮面』は私立探偵祝十郎が変身してバイクの上から2丁拳銃を打ちまくる。新聞記者クラーク・ケントが変身して空を飛ぶアメリカの『スーパーマン』とは設定が違ってどちらも人気の的だった。ザ・モップスの鈴木ヒロミツによる歌「月光仮面」には『スーパーマン』のオープニング台詞も登場する。

    ▶昭和のラジオ・テレビ物語:第3話(高22期 高橋揚一)” に対して3件のコメントがあります。

    1. 廣瀬隆夫 より:

      一番良く観ていたのが「少年ジェット」その次が「月光仮面」ですね。「鉄腕アトム」の実写版は記憶に残っていません。「少年ジェット」のジェームスは、私もトニー谷だと思っていました。和泉雅子が出ていたとは驚きです。冒険家になって北極へ行ったりと面白い人生を歩まれましたね。「ウー、ヤー、ター」はよく真似していました。

    2. 高橋克己 より:

      またも揚一さんのオタク振りが横溢する第3弾。ここに書かれていないことで私が思い出すのは2番の歌詞 ♬行こうぜシェーンよ 虜(とりこ)になっても負けないぞ オーッ♬です。私の論は「虜になった時点で負けてるじゃん」でした。もう一つは「ハリケーン博士」の「ハリーッ ケーンッ」と「ウーヤーター」の掛け合い。馬鹿らしい、と思いながらつい見てしまうんですよね。この種の番組は、「今でいう○○と置き換え得るモノがないような気がするが、アニメの「ドラゴンボール」などはその類かな。小学生の孫が我が家に来ると、父親が40年前に読んでいた「アラレちゃん」全巻を貪るように読んでるから。

    3. 松原隆文 より:

      他にも「謎の海底人ハヤブサ」とか「スーパージャイアンツ」「七色仮面」なんてありましたよね。たわいもないと言えばそれまでですが、夢がありましたね。

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