▶ポップ君、防大留学生(高22期 加藤 麻貴子)

防大の留学生のホストファミリーを長年していると、国は関係なく昔は息子のように、今は孫のように思えてきます。この3月に卒業するタイ王国のポップ君を紹介します。タイでは氏名がとても長く発音も難しいのでほとんどの人はニックネームを呼び合っていて、ポップ音楽を好きな彼はポップと言います。通常は3月末頃に来日入校式を済ませて日本語研修生になり翌年に本科1年生となり4年間勉学に励みます。コロナ禍なので彼は2020年10月に来日、ホスト家族になったものの外出禁止期間もあり、自由になってからは訓練や同僚と遊びに出かけたり忙しく実際に我が家に来るようになったのは3年生の後半くらいからです。しかし年が明けてからは卒業間近でもあり度々遊びに来て胃袋を満たし、爆睡して帰っていきます。
2月初旬に来た時には横須賀軍港クルーズを楽しみ、初めてということで動画や写真を撮りまくっていました。桟橋を離れると間もなく米軍側の海面に四角い物体が数個浮かんでおりガイドの説明もありませんでした。不思議に思い下船の時にガイドに尋ねると、それは「消磁体」という艦船の磁気を消す重要な機器でした。そういうものに注目するというのはさすが防大生だと思いました。私も「消磁」について調べて勉強になりました。
23日には横須賀国際交流協会主催のジャパン・フェスティバルが汐入で開催されていたのでそこで1日過ごしました。成人式の衣装のような羽織袴を着てご満悦で囲碁を試したり、厚紙製ではあるが本物らしい甲冑を身に着けたり、茶道で薄茶を頂き折り紙で可愛いいバスケットを一緒に作りました。とても器用で覚えも早いので私は彼に教わりながら完成させました。剣玉には興味津々で1時間近くトライして大皿、中皿、小皿、先端に入れることができ、さらにそれらを連続して行う「日本一周」と言う技も一度だけ成功させ、剣玉の指導者達を感嘆させました。
帰宅してから25日の研究発表の口頭練習をしました。非破壊検査に関係する研究内容の中にフーリエ級数の式があり親しみを覚え、難しいけれど彼の説明がぼんやりと解ったような気になりました。日本語で発表するので「説明、推論、チャート、位置」などの発音をアドヴァイスしました。タイの人の発音はシとチの区別しにくいことが多くあり前述の言葉が「シツメイ、シロン、シャート、イシ」のように私には聞こえたので発表する時はしっかりと発音したほうが良いので直しました。すぐに直す頭の良さに驚きました。
留学生たちと過ごすと未知への扉を開くヒントをもらうことも度々あります。ポップ君はこの3月に防大を卒業して帰国 淋しくなります。





