▶戦後80年に観た『ひまわり』(高25期 廣瀬隆夫)

戦後80年という節目のせいか、最近はテレビで戦争映画がよく放映されています。YouTubeで断片的に目にしたことのあった『ひまわり』も、通しで観たいと思っていた一本でした。今回、TVKで放送されたものを録画し、ようやくじっくり味わうことができました。

第二次世界大戦中、ナポリに住む若い女性ジョバンナ(ソフィア・ローレン)は、陽気で自由奔放なアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)と恋に落ち、結婚します。ところが戦況が悪化し、アントニオはソ連戦線へ送られてしまいます。戦後になっても彼は帰らず、ジョバンナは夫が生きていることを信じて極寒のソ連へ渡ります。兵士たちが眠っていると言われているひまわり畑の広がる地で、ついにアントニオの消息を探し当てます。しかし、彼は現地の美しい女性マーシャ(リュドミラ・サベリーエワ)と家庭を築き、子どもまで授かっていたのです。

すべてを悟ったジョバンナは、深い悲しみを胸にイタリアへ戻り、やがて別の男性と家庭を持ちます。ラストのシーンで、ナポリの駅でジョバンナとアントニオは再会します。再会の場面で二人の心が通じ合っても、もう元には戻れません。戦争は、愛までも奪ってしまうのです。二人は静かに別々の道を選びます。

ストーリー自体はシンプルです。しかし、ヘンリー・マンシーニの心を打つ悲しいメロディーに乗せて映し出される映像の数々──果てしなく続くウクライナのひまわり畑、凍りつく戦場、そしてナポリのまばゆい陽光とその対比が胸を突きます。ソフィア・ローレンの演技は圧倒的で、美しさと同時に、愛に突き動かされる女の情念の怖さすら感じさせます。あまりに強いその眼差しに、もし彼女を連れ合いに持ったら、幸せなのか、それとも恐ろしいのか、そんな思いさえよぎります。

「戦争さえなければ」という思いが、ラストシーンの余韻とともに胸に迫ります。『ひまわり』は、半世紀以上前の映画ですが、戦後80年を迎えた今だからこそ、改めて観る価値のある映画だと感じました。


【ひまわりのギター演奏 by 福田進一】
https://www.youtube.com/watch?v=eKFmMyWuR5U&t=2s

▶戦後80年に観た『ひまわり』(高25期 廣瀬隆夫)” に対して2件のコメントがあります。

  1. 高橋克己 より:

    映画「ひまわり」のストーリーと似た悲話が、先の大戦で日本が負けるまでの約50年間日本だった台湾にもあるので紹介します。
    大東亜戦争には台湾人の軍人・軍属が207,183人が召応、うち30,304人が戦死し、その約1割が原住民でした。そうした一人に、高砂義勇隊としてインドネシアのモロタイ島で戦い、終戦を知らないまま1974年12月まで深いジャングルで過ごしたアミ族名スニヨンこと中村輝夫がいます。
    同じ様に終戦後もそれを知らずに戦地で隠れ暮していた方に、グアムから72年1月に帰還した横井正一や74年3月にフィリピンのルバング島から帰還した小野田寛郎がいます。この両名は後に結婚し、共に90歳を超える長寿を幸福裡に全うしました。
    他方、モロタイ島で発見された時、スニヨンの故郷台湾はもはや日本ではなかった。インドネシアのマリク外相は「日本政府へ送還すべき」と声明しますが、日本政府は「どこに帰還するかは当人に決めさせる問題」と述べ、受け入れを丁重に断ったのです。横井・小野田両氏への厚遇と違って、日本政府はスニヨンに32年間の軍人恩給を支給しただけでした。
    話はこれで終わりません。23歳で出征したスニヨンには身重の妻がいました。が、32年経って彼が台湾に帰った時、彼女は再婚していたのです。戦死の報にも関わらず10年間も夫の帰りを持っていた妻も、妻と子を養った再婚相手も、スニヨンは責めることが出来ませんでした。
    スニヨンは息子夫婦と暮らすことを望み、息子夫婦はスニヨンにつくか母につくかの選択を迫られます。結局、72歳の再婚相手が家を出て、スニヨンは妻と暮らすことになります。が、それから4年余り経った79年6月、スニヨンは台東郊外の自宅で亡くなります。59歳、肝臓癌でした。
    ところで「在日」や「第三国人」という語があります。終戦まで日本で日本人として暮らした朝鮮半島と台湾の出身者は、戦後、故郷へ帰るかどうかの判断を当人に委ねられ、多くの者が故郷に帰りました。が、日本の残った方も少なくない。「在日」や「第三国人」はこうした方々を指す語で、「第三国」とは「日本とGHQ(=米国)以外の第三の国」ほどの意味です。
    「ひまわり」に戻れば、私は中学生の頃からギターが趣味で、昨年春から150曲ばかり新たに録音してyoutubeの「Katz channel」にUPしています(最近は歌も)。実は「ひまわり」は、そこに最初に弾き入れた曲なのです。試しに是非一度アクセスを!⇒
    https://www.youtube.com/@Katzchannel-q5e

    1. 廣瀬隆夫 より:

      コメントありがとうございました。
      悲惨な話ですね。「ひまわり」よりもひどい結末です。戦争によって破壊されたものは、都市や建物だけでなく人の心や人生も破壊してしまったのですね。戦争はダメですね。

      高橋さんの演奏された「ひまわり」の曲も拝聴させていただきました。哀愁が伝わってきますね。
      https://www.youtube.com/watch?v=b11pSlHhx1s

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