▶認知症サポーター養成講座に行ってきました(高25期 廣瀬隆夫)

高層ビル群の一角、池袋サンシャイン60の42階。地上は賑やかな雑踏ですが、その広いセミナールームには、どこか静かで真剣な空気が漂っていました。雑司ヶ谷の鬼子母神にも近い場所で、「認知症サポーター養成講座」に参加しました。私も最近物忘れが激しく認知症についての不安もあり、もっと詳しく知りたいと思ったからです。

50人ほどの参加者の多くは、私と同じように認知症というテーマが自分自身でも身近になってきた年齢層の方々でした。講師は、手首にオレンジ色のブレスレット(オレンジリング)を光らせた、認知症とは縁のなさそうな、はつらつとした若い人でした。このリングが、「私は認知症の方を理解し、応援します」という印であることを後で知りました。

私たちはつい、「認知症」と聞くと、物忘れが激しく、徘徊、そして時に暴言や暴力といった「怖いイメージ」を持って蓋をしてしまいがちです。しかし、講師の言葉は、その蓋をそっと開けてくれるものでした。

「認知症そのものは『病気の名前』ではなく、病気によって現れる一連の症状の総称です。たとえばアルツハイマーやレビー小体病など、原因となる病気があるからこそ、記憶や行動の変化といった症状があらわれます。その行動の裏には、本人なりの理由や意味があり、症状を抑えようとする心の働きでもあるのです」

この一言で、私の認識が変わりました。彼らの行動には、「理由」がある。記憶や認知の力が衰え、世界が急に分からなくなってしまった故の混乱と不安が行動に出ていると知った時、恐怖心は、少しずつ和らいでいきました。

そして、講座は予防の話へ。予防、あるいは進行を遅らせるためには、使わないと衰える筋肉と同じで、脳を活性化させることが鍵だそうです。年を取ったら速く走れないのは当たり前。ゆっくり着実に歩けるように日頃から心掛けることが重要と言うことでした。

1.笑うこと、楽しいことで、ドーパミンをたっぷり出す。
2.人とのコミュニケーションを絶やさず、孤独にならない。
3.役割を持ち、人の役に立つことで生活を充実させる。
4.褒めて、褒められて、自己肯定感を高める。

どれも、特別なことではありません。日々の生活の中で「意識して続けていく」という、小さな積み重ねが重要だと思いました。

認知症の人たちと付き合っていくために必要なのは、「彼らの遅い反応」に対して、私たちが「気長につきあう優しさ」を持つということが重要だと思いました。

講座を終え、私もオレンジリングを身に着けました。これは、知識を得た証というより、これから彼らのペースに「温かい目で寄り添っていく」という、小さな決意の証なんだと思いました。

私も含めて誰もがなりうる認知症。だからこそ、私たちは、まず「理解者」という名のサポーターになることから始めるべきなのだと、サンシャイン60の静かな部屋で強く感じた一日でした。

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