▶「すばらしい人体」と「すばらしい医学」(高22期 加藤 麻貴子)

子供の頃からまた結婚後も三世代同居の大家族で暮らしてきたので「病・老・死」は常に身近にあった。中3の時、祖父は「間もなくなので心構えをするように」と父母に告げ、一週間後未明に孫たちは起こされ祖父の部屋に行くとかかりつけ医に看取られ臨終の時を迎えていた。その後、祖母は脳梗塞となり10年の時を半身不随で過ごした。60年ほど前のことだ。死を予見できること、脳にダメージを受け不自由になっても生きられるという人間の生命力を感じた出来事だった。
また、最近、知り合いの心筋梗塞の症状や手術の様子を聞いた。「20年ほど前のある日、胸の辺りに強烈な痛みを感じ不安に思うも暫くすると嘘のように治る、また痛みに襲われるというふうで入院、心筋梗塞だったので手術を受けた。術後の執刀医の話では『3本の血管を交換した。2本は脛から、1本は胸膜にあるあまり使用されてない血管で拘束を起こした血管と交換した。それから若い頃にも心筋梗塞を起こしたようで、細い血管を動脈の替わりにていてラッキーだった』という訳で心臓はすっかり強くなった。」自己治癒にも驚いたが、まるでスペアタイヤを積むようにスペア血管を持っている、なんという人体だ。
別の知り合いの肺がんの手術の話では「まず腹部に穴を開け袋を投入、次に内視鏡で患部と周辺を切除、それらを袋に入れて引き出す。開腹手術ではないので退院も早かった。それで一つの肺の三分の二ほど切除したので、胸のその空間はどうなったか医者に聞くと胃や肝臓や腎臓などの臓器が少しずつ移動して空間を埋めるのだって。あれから15年以上経つけど元気にしている」開腹手術しないで癌を取り除く、なんと素晴らしい医療だ。
先日、山本健人著の2冊を読み終えた。彼は2010年に京都大学医学部を卒業した医学博士で外科,消化器、感染症などの専門医だ。どちらも平易な言葉で解りやすく書いてあり一単元は2~3ページでとても読みやすくイラストもリアルであるが美しい。巻末に読書案内もあるし「すばらしい医学」には超圧縮の医学の歴史のおまけまでついている。
人体はやわではないが経年劣化する仕様になっており、全ての病に打ち勝っても加齢からは逃れられない。ある意味で医療は永遠の負け戦に果敢に立ち向かっているのだ。
これからの人生、自身の人体と上手く付き合っていこうと思う。