「いきで素敵な江戸しぐさ」講演録(第一講 芝先生のこと)

これから、7回に分けて江戸しぐさのお話を掲載します。平成15年(2003年)に、当時、私が参加していた研究会で江戸しぐさ語りべ の越川禮子さんをお招きしてお話をお伺いした時の講演録です。講演をお聞きして、私が文字起こしをしたものです。ホームページ公開については、越川禮子さんの了解を得ています。写真は、地下鉄などのホームに貼られていた江戸しぐさのポスターです。(高25期 廣瀬)

講師:越川禮子さん
日時:平成15年(2003年)1月23日(18時〜19時30分)
場所:江東区役所東陽出張所(木場)
参考:商人道「江戸しぐさ」の知恵袋 越川禮子著 講談社+α新書
江戸の繁盛しぐさ 越川禮子著 日本経済新聞社

(1)江戸しぐさ第一講 芝先生のこと
【お目見えしぐさ】
越川でございます。最初にお断りしたいのですが、私の話は資料による研究ではなく、日本でただ一人、江戸しぐさを発掘しまして、再現して伝承されました、芝三光(しば・みつあきら)先生から口伝えで聞いたものをお話しています。芝先生の芝は増上寺の芝です。本名は亡くなる10日前くらいに知ったんですが、江戸講の講師は、あだなで呼ぶ習わしがありまして、かなで、うらしま・たろう、と言うんです。いきな名前なんですね。

今日の演題は「いきで素敵な江戸しぐさ」というもので話したいと思います。やさしく、面白い話を選んできたんですけど、私の話はいつも、幕の内弁当なんて言われて、入れすぎると言われるんです。せっかくのチャンスなので、つい欲張っていろんな話をあれもこれもと、入れようとしてしていますので、全部話せるかどうか分かりませんが、出来るだけ時間の限りお耳をけがしたいと思います。今日のお話の内容は本にも書いてありますが、話と本では、インパクトが違うと思います。

【江戸しぐさの最終章は死に様】
さて、その先生は江戸しぐさの講師なんですが、昨年で三回忌を迎えまして、胃癌で腹膜炎を併発して、亡くなったんです。江戸しぐさの最終章、一番終わりの章は、死に様だそうです。これは人間誰でもそうですね。死にざまというのはあっても、生きざまという言葉はないようですね。先生は最後まで、江戸講の講師として、江戸の町衆だったら、こうしたろう、こう考えただろう、ああしたろう、ということを思い描いて芝居をしてたと言うんですね。

今の現代と合わない場合もあったし、随分いろいろ苦しんだわけですけれど、江戸講最後の講師として自ら演じていたわけですね。自分の考え方、生き方が江戸しぐさだと良く言われていたんです。この先生の一代記、うらしま行状記、を書いたら面白いと思っているんです。江戸の講師の死に様は、行脚の路肩に道を説きながら崩れ折れるように、倒れ果てることだそうです。六十過ぎたら畳の上で死ねると思うなというのがあるんです。江戸の講師というのはそのくらいのつもりで、乞食行脚、全国飛び回っていろんな人に話をすることだったようですね。

でも、癌の最終のときは、腹膜炎を併発しまして、お腹がこんなに膨れてしまって、私がお見舞いに行く20分間のためにガスを抜いておかないと、とても会えないような状態なんですけど、最後まで話してくれたんです。私にクレジットという形で録音をとっておいてくれたんですよね。井田病院というところがありましてそこは、日本の行政として始めての素敵な老人病院、ホスピスなんですね。個室もホテルみたいな病院でした。そこは何年か前の10月7日にオープンしたんです。10月1日に私がいろいろ奔走しまして先生に入っていただいたという、そういう病院だったんですね。そこにカウンセラーのような方がいるんですね。江戸しぐさの話をされて、それを録音したんです。何巻かあるんですが、うなるような声で全然聞きとれないんです。

【江戸しぐさの師、芝先生のこと】
先生の素性をお話しますと、先生は最先端の電子工学をやられて、国文学とか医学とかもやってらして、米国のポピュラーサイエンスという雑誌の日本語版の編集長をされていたんですね。それで大変な激務で体をこわされて、そこをやめた後は江戸しぐさの普及と伝承をされたという生涯を送られた方なんですね。ちょっと複雑な生い立ちがあるんですけど、母方が江戸ゆかりの方なんですね。このあたりは、追い追い書いていこうと思っているんですが、先生が江戸しぐさを教えてくださったとき、言われたことは、江戸しぐさは知識ではないんだと、日本人は何でも、お勉強として知識としてとらえてしまうんですが、そうではないんですよと。また、単なる礼儀作法としての振りとかエチケットとかポーズでないということを皆さんに知らせて欲しいとおっしゃっていました。

日本人として、遺伝子として血の中に流れている日本人のグローバルスタンダードとしての江戸の感性なんですね。皆さんの. DNAの中にあるということを、早く気づいて欲しいとよくおっしゃっていました。皆さんが小さいときに聞いた、お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさん、近所の人たちから聞いた話やしぐさの中に思い当たることがあるんじゃないかと思います。江戸しぐさと言うものはそういうものです。

⇒ 江戸しぐさ第二講 江戸を楽しむ

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