▶ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』の感想(高25期 廣瀬隆夫)

ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を、ようやく読み終えました。アフリカで誕生した人類が、どうやって今のように地球の支配者になったのか――そんな壮大な話を、人類の大きな転換点である「認知革命」「農業革命」「科学革命」の3つから紐解いていく、とんでもなくスケールの大きな本でした。

読んでいて一番衝撃だったのは、認知革命「フィクションを信じる力」が人類の運命を変えたというところ。神話とか宗教、国家、お金、会社など実際には存在しない「物語」を、みんなで信じることで大勢の人が協力できるようになった。それが、他のネアンデルタール人などの人類種との生存競争でサピエンスが生き残れた理由だったのです。こんなふうに「想像する力」が文明を作っていったという考え方は、とても新鮮で、目からうろこが落ちました。

そして、農業革命。これもてっきり“人類の進歩”かと思いきや、「実は大失敗だったかもしれない」という逆の視点を突きつけられました。確かに食料は安定したけど人口が無制限に増え、労働はキツくなったし、病気や争い、貧富の差を広げる身分制度まで生まれてしまった。安定と引き換えに、自由や平等、心身の健康を失ってしまったのか、と考えると、単純に「安定=幸せ」とは限らないんだ、と感じました。

科学革命に至っては、私たちがいま生きている社会そのもの。科学のおかげでテクノロジーも医療もすごく進んで、暮らしは便利になった。でもその一方で、核兵器や環境破壊、AIなどの新しい問題も抱えています。人類はものすごい力を手に入れましたが、その力をどう使えばいいのかは誰にも分かっていない。これは正直、ちょっと怖くなりました。

読み終えて一番感じたのは、「じゃあ、私たちはどこへ向かってるの?」という疑問です。人類はここまでずっと進歩してきましたが、それって本当に幸せにつながってるのか? テクノロジーは進化してるのに、人の心は空っぽになっていっていないのか? そんな問いが頭から離れません。

『サピエンス全史』は、ただの歴史の本ではなくて、今を生きる私たちに「このままでいいの?」って問いかけてくる一冊でした。この地球で未来をどう生きていくのか、そして“本当の幸せ”って何なのか。簡単に答えは出ませんが、考え続けていくことが大事なんだ、と強く思いました。

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ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)は、イスラエル出身の歴史学者・哲学者であり、世界的なベストセラー作家としても知られています。1976年にイスラエルのハイファで生まれ、オックスフォード大学で中世史と軍事史を専攻し、2002年に博士号を取得しました。現在はエルサレムのヘブライ大学で歴史学の教授を務めています。

ハラリの代表作には以下のようなものがあります。

『サピエンス全史』(原題:Sapiens: A Brief History of Humankind)
人類の進化と文明の発展を、認知革命・農業革命・科学革命という三つの大きな転換点から描き出し、世界的なベストセラーとなりました。

『ホモ・デウス』(原題:Homo Deus: A Brief History of Tomorrow)
人類の未来をテーマに、人工知能やバイオテクノロジーがもたらす可能性と倫理的課題を探求しています。

『21 Lessons』(原題:21 Lessons for the 21st Century)
現代社会が直面する政治的・技術的・哲学的な問題について考察し、読者に深い洞察を提供しています。

『NEXUS 情報の人類史』
情報ネットワークの進化とその社会的影響について論じ、特に人工知能の台頭がもたらすリスクに警鐘を鳴らしています。

【参考】
・サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)2023年
・サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)2023年
・漫画 サピエンス全史 人類の誕生編 河出書房 2020年
・漫画 サピエンス全史 文明の正体編 河出書房 2021年

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