▶医療事故と誤診が重なった不思議な体験
車の不思議な体験では危険な事例ばかりを取り上げましたが、健康面での不思議な体験をご紹介します。(高22期 伴野明)
ベッドでうつ伏せになり、左手をあごの下に入れて携帯のメールを打っていました。メールを打ちながら「チェッ」と口をとがらせて顔を動かしたとき、あご下に小さな膨らみを感じました。触ってみると納豆粒みたいな感じ。痛くもない、かゆくもない「なにこれ?」と鏡をみてもやっぱり何かの粒が入っている感じでした。
「ああ、吹き出物というか脂肪の塊だな……」と思いました。というのは五年ほど前に右頬の上部にそんな感じの物が出来たことがあったからです。そのときはオヤジを病院に連れて行った時、ついでに先生に尋ねると「それ、脂肪の塊だね、気になるなら紹介状書いてやるから久里浜の医者に行きなさい。で、切ってもらえばいい、ウチは今、外科手術はやらないんだ」ということで切ってもらった事があったからです。
同じ先生に見てもらいました。ところが今回は対応が違いました。「紹介状書くから、総合病院に行きなさい」というのです。「何が違うんだ?」と思いましたが、言われるままに総合病院へ。その時診察したのは比較的若い先生でした。前の話をすると、「首回りは神経とかいろいろなものがあるので簡単に切っちゃうわけにはいかないんです」といいます。
「まあ、確実に診断した方がいいから内部組織を取って検査する『生検』やりますか?」と聞くので、「やってください」とお願いしました。『生検』をやって一週間後、結果を聞きに行きました。
「ワルチン腫瘍ですね」
「あの、それ何ですか?」
「良性腫瘍です」
「危険じゃない?」
「そう」
「それって、放っておいて大丈夫な物ですよね、良性なんだから」
「うーん、大丈夫ですけど、悪性に変化する可能性も完全にゼロではないんです……」
迷いました。健康には自信があり、体は全身絶好調なんですから。「エッ……」先生の顔を見たとき、コメカミに「プチッ」と刺激が来たんです。
「これ、なにかある……」
「取ってください」と返事しました。
「分かりました、来週手術のスケジュール出します」その日はそこまででした。
手術の予定を聞きに病院に行きました。「あまり空きがないので来週なら出来ますけど、その先になると来月になっちゃいます」というので、「じゃぁ来週」と返事しました。
「了解、じゃあ看護師から入院案内を聞いてください。」
「入院?」……そのときまでパッと切って日帰りのつもりだったので驚きました。看護師によると首回りの手術は全身麻酔なので入院が必要とのことでした。ガーンと来ましたがしかたがない。
「ワルチン腫瘍」なんて聞いたこともない。それに名称が悪すぎ。帰ってネットで調べました。「ワルチン腫瘍」は確かに良性の腫瘍で喫煙者に多いとありました。
「タバコなんか、くわえたこともないのに……」
手術が終わり、当日、麻酔が切れてボヤッとしていると、「先生が見えますので宜しいですか?」と看護師。
「ああ、いいですけど……」痛みとか全然ないので手術は問題なかったと思っていました。
ところが驚きました。先生方が四人も同時に入ってきたんです。しかも手術担当の医師はおらず、年配の偉そうな先生ばかり。
「手術後ってこんなに大げさに挨拶に来るもんなの?」と、なんとも異様な雰囲気でした。
いちばん年長の先生が口を開きました。「今日の手術でミスがありまして耳たぶの一部を切り落としてしまいました。申し訳ありません……」と全員が頭を下げました。
「エッ」と触ってみると確かに耳にガーゼが付いています。「医療事故」ということで今回の手術代は全て無料とのことでした。その耳たぶはすぐ縫ったので問題ないはず、と言うので、むしろラッキーと思いました。
一週間後、手術後の説明があるというので病院に行くと、いつもと違う階の個室に通されました。居たのはいちばん年配の先生でした。肩書きは忘れましたが○○部長ぐらいの地位の人。
「このたびはいろいろご迷惑をおかけして申し訳ありません。実は……」
聞いて驚きました。しかも「ワルチン腫瘍」ではなく悪性の「粘表皮癌」だったというのです。
驚いていると、以後の診療と観察は全て無料、そして医療事故と誤診に対する「和解金」というべきかその交渉になりました。術後二十年は立ちましたが体には何も変化はなく、あれは「超早期発見」だったということでしょう。思い出すとあの「コメカミのプチッ」がなければ私はどうなっていたことか……
みなさんも、体の異変に気づいたら早めに病院に行きましょう!
すごい経験でしたね。ビックリしました。こういうこともあるんだと。事実は小説より奇なりですかね。