▶米国のニュースは見出しの翻訳が難しい(高22期 高橋 克己)
来週からNY市でトランプの「口止め料事件」の刑事裁判が始まります。容疑は、10数年前の不倫相手に支払った口止め料を選挙資金から支出したというものです。
これを「Newsmax」という親トランプ紙が先刻、「Judge Napolitano to Newsmax: Trump NYC Jury Must Have 'No Agenda'」という見出しで報じています。
「agenda」は通常「議題」や「政策」などの日本語にもなっていて、GoogleやDeeplのAI翻訳もそう訳します。が、それでは意味が通じないし、辞書を引いても適切な訳が見つからない。そういう時、私はネットの「英辞郎」というサイトで調べます。すると「底意」や「計略」という訳が出ていて、まさにピッタリ。
つまり、「(元)判事のナポリターノ氏はNewsmaxに対して、トランプのNY裁判の陪審員は「底意を持たない者」でなければならない(と述べた)」という日本語になります。
トランプ氏は、NYやDCでは過去2回の大統領選でヒラリーやバイデンの1‐2割しか得票できないほど嫌われているので、そういう地域が管轄する陪審裁判で、トランプが好きとか嫌いとかいった「底意」を持たない、公平公正な陪審員を選ぶのが難しい、という訳です。
「英辞郎」はお勧めですよ。
現地時間15日に陪審員選びが始まったことを「Axios」が報じています。
裁判所が、補欠6人を含む18人を選ぶために数百人を呼び出し、最初のバッチ96人のうち34人が残りました。内訳は、女性が白人20 +α、ヒスパニック系1、アジア系4、男性が白人14、アジア系1で、残りの6人は不詳とのこと。
選考方法は、どのメディアを利用しているか、居住地域、自らや親戚や親しい友人がトランプ陣営のボランティアをしたことの有無などのアンケートに答え、更に双方の弁護士が精査のためにソーシャルメディアを調べたり、より個人的な質問をしたりするそうです。
多くのメディアが右か左に偏向しているこの国の状況で、左右のを複数利用していないとNGということでしょうか。またバイデン陣営のボランティア経験の有無は問わないのかなど、茶番劇の匂いが漂います。トランプはこれらの裁判を「カンガルー裁判」とか「ショー裁判」とかと呼んでいます。
この中道メディアは「 50 人の候補者が即座に失格になったことは、この米国史上最も注目度の高い事件で、(No Agendaの)陪審員となる10数人のニューヨーカーを見つけることが困難な現実を浮き彫りにしている」とし、選考に2週間かかるそうと書いています。
さすがは裁判官を大統領が任命し、検事を選挙で選ぶ国柄、日本とは景色が違うなあ、と実感します。
agendaが議題や政策の意味の他にこの記事では底意や計略の意味もあるということで思い出したことがあります。以前民主党が好んで用いた言葉のひとつにマニフェストがあり、政策という意味で使われていたと思います。私は積荷目録という認識しか無かったのでとても奇異に感じました。政策目録というような意味合いで使われていたのでしょう。フランスに暫く滞在していた友人が言うにはフランス人は高校生も大人も頻繁にmanifestに出かけるそうです。バカンスに出かけていてもmanifestがあれば参加するとのこと、なんのことかと思いましたらmanifesterはデモに参加するという意味で「民主主義を守る」ことが教育の目標の一つであるお国柄ならではのことと思いました。
本題とはあまり関係のないコメントですが、、、
私の「manifest」は西部開拓史のそれだったので、民主党のマニフェストには別の意外感を持ちました。米国は「明白な天命」という傲岸不遜な日本語訳のこのスローガンで、インディアンを蹴散らした西部はおろか、ハワイ、グアム、フィリピンを我が物にし、浦賀にまでペリーを寄こしたのですからね。日本の占領には100年を要したけれど。