▶会報は必要ないですか?

先日、同窓会の総会に行きましたら、会報をどうするかで議論が盛り上がっていました。若い人は、紙の会報はいらない、ホームページやSNSでことが足りる、住所も必要なし、メルアドやLINEのIDがあれば充分という主張でした。ネットに馴染みなくて良く分からない年配の人たちは、反論できず、そんなものかなあ、と押し切られていた感じでした。

このように紙をどうするかという議論は、1970年代にパソコンが出てきた時にすでに巻き起こっていました。コピー機の代名詞ともなっているゼロックス社のアナリストは、IBM-PCなどのパソコンが出てきた時に、近い将来、紙はなくなる、コピー機は売れなくなると予想して、将来に備えるために、コンピュータの研究開発が必要と判断してシリコンバレーにパルアルト研究所を設立しました。

そこでWindowsやMacの基本技術となる、ポインティングデバイスのマウス、グラフィクスが表示できるビットマップディスプレイやインターネットの基本となるイーサネットが開発されました。ゼロックス社は、パソコンが普及すると紙がなくなるのではないかと考えていましたが、パソコンの普及でプリンタが売れるようになり、紙は益々使われるようになりました。今では、プリンタのないオフィスは存在せず、紙に付随するビジネスは、ゼロックス社の大きな収入源になりました。

パソコンで文章が読めるようになると、本がなくなるとも言われていましたが、確かに紙の本は、発行部数が減っていますが、紙を模した電子ペーパーというデバイスが開発されて、それを使った電子ブックが普及しています。紙から電子ペーパーへと材質は変わりましたが、本や出版という形態は残っていて出版社は業績を伸ばしています。

そこで、会報です。会報も本や雑誌の一種です。ホームページやSNSは、確かに便利です。簡単に発信できて手軽に読むことができます。ホームページやSNSは、個人が思いついたことを書いていきます。どうしても内容が表層的で薄っぺらになります。一方、会報は、編集会議で企画を練り、構成を考え、取材して記事を書き、推敲を重ねて初めて出来上がります。たくさんの人が関わり、手間をかけて作りますので、中身が濃いものになります。デジタル化が進んで電子ブックが主流になったとしても、会報作りのプロセスは残すべきものです。

また、会報は、団体の活動の報告書の役割があります。団体は、ある意味、会報を作るために存在しているのです。会報を廃止するということは、団体の活動を放棄することに他なりません。会報は、団体の組織や活動を写す鏡です。私は、団体に入るかどうかを判断する時に、まず会報を取り寄せて読むことにしています。会報がしっかりしている団体は、組織がしっかりしていて間違いありません。また、会報の記事には、世相を反映させたものが多く、歴史的に貴重な資料として残ります。ホームページやSNSには、このような資料としての価値はないでしょう。

前述の若い人は、住所は必要なく、メルアドやLINEのIDがあれば良いという主張をしていましたが、これは、何もない平時には問題ないでしょうが、このようなものにだけに頼っていると、地震が起こったりして電気などのライフラインが無くなったら、どうすることもできなくなります。その時、きちんと整備された住所録があれば、大変役に立つでしょう。また、メルアドなどは簡単に変更、詐称できますので、本来、存在を証明するための手段として信頼できるものではありません。契約をするときに戸籍謄本や住民票で本人確認するのはそのためです。メルアドで、お金を借してくれる銀行がありますか?将来、会報を電子ブック化したとしても会員の住所のメンテナンスは必要です。個人情報保護法にも、住所などの個人情報は最新の状態に保つ義務があることが明記されています。

ホームページやSNSのコンテンツもサーバが地震や津波で破壊されたら何も残りません。どんな国にも公文書館という国が貴重な文書を保管する書庫があるのはそのためです。私たちは、文明社会という、便利ですが、非常に脆弱な環境の上で生活していることを常に考えていなければいけません。

インターネットは、今まで人類が経験してきたことのない便利なコミュニケーション環境を提供しました。そのインフラの上でホームページやSNSというサービスが提供されています。しかし、これは、あくまでツールであり、このツールが新しい何かを生み出すものではありません。モンブランの高級万年筆を買ったからと言って、文豪が綴るような名文を書くことはできません。このツールを使って何をやるかという知恵が大事なのです。ネットの時代だからそれに乗ってホームページやSNSに移行すれば良いという安易な考え方は大間違いです。

会報を発行することは団体の職務の基本中の基本、ネットの時代だから廃止するなど、とんでもないことです。会員を引きつけ団体を存続させるためには会報は絶対に必要です。会報が送られてこなくなった団体に会費を払う人は少ないでしょう。ホームページやSNSが出てきて、あまりモノを考えない人たちが増えてきたことを残念に思っています。知っているつもり、分かったつもりで、本質を殆ど理解していない人たちが増えています。読み応えのあるしっかりした会報を作って文化を伝承してもらいたいと思います。会報なくして団体にあらずです。(高25期 廣瀬隆夫)

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