▶グルジアの名花「ニーナ・アナニアシヴィリ」(高22期 松原 隆文)

ニーナ・アナニアシヴィリ 白鳥の湖 Youtube

もう、だいぶ前の夏の夜のことだ。何気なしに教育テレビをつけると、キーロフバレエをやっていた。出し物は、「白鳥の湖」。暑い日で寝付けそうもない。バレエを見るにはうってつけの夜であった。音楽好きな娘と「少し見ようか」と言って見始めたが、気がつくと最後まで見ていた。指揮はゲルギエフ、白鳥姫は、ウリアーナ・ロパートキナというスターバレリーナであった。群舞が素晴らしく、どの踊り手も上手い。また演奏が素晴らしかった。しかし、白鳥姫が、踊りは抜群だが、何か私の理想ではない(ロパートキナにケチをつける気は毛頭ない)。この日から理想の白鳥姫探しが始まった。DVDを何本も買って見比べた。(高22期 松原 隆文)

みなそれぞれ良いのだが、やはりアナニアシヴィリの日本公演を映像にしたものが私は最高に気に入っている。普通、バレリーナは足が細い。しかしこの人は足が太い。このはち切れそうな太い足で、「これでもか」「私を見なさい」とばかり踊りまくるのである。そして表情が何とも言えず愛くるしい。「グルジアの名花」とか「幸福のバレリーナ」と言われるゆえんであろうか。あまりにも素晴らしいので、この人の「ドンキホーテ」も買ってしまった。この出し物、踊りは見応えがあるのだが、音楽がつまらない。

いつも、アナニアシヴィリを見るときは、酒を飲んでほろ酔い加減になっている。第2幕で、白鳥姫が登場するときは、誰よりも早く拍手をしている。「誰よりも」というのは、ライブ映像の客のことである。黒鳥のバージョンの時などは、娘に「うるさい」と言われるまで拍手している。まあこんなに魅力のあるバレリーナはそうお目にかかれまい。そのニーナ様が平成24年に日本公演にやって来た。このときは「サヨナラ公演」と銘打っていたが、見に行くことが出来ず、「ああもう一生見られないな」と、少し悔やんでいた。

ところが、翌25年に、熊川哲也が客演で彼女を招待したのである。11月に確か2度だけ舞台に立ったのだ。私はこれが彼女を見る最後のチャンスと思い、娘と知人の3人でオーチャードホールへ行った。わたしが持っているDVD の日本公演もこのホールで録画した物だった。いわば踊り慣れたしかも思い出深い舞台であった筈である。

さて、いよいよ11月3日の当日、第2幕で待ちに待った彼女が出てくると、もう場内割れんばかりの拍手、そして静かーになった。スターとはこういうものか!心配した踊り(何と言っても御年50歳)も素晴らしかった。体型も全盛期とほぼ同じ。動きがやや控えめで、全盛期の「これでもか」という動きではなかったが、その分、何か慈悲深さを感じさせる踊りや表情であった。

終了後、客席まで出てきてくれたそうだが, 私はトイレに行っていて、お目にかかれなかった。もう残念無念だった。かなり年配の品の良い紳士が随分来ていたのは,昔からの彼女のファンなのだろうか?いずれにしても、私も娘も知人も長く記憶に残る公演であった。

ところで、ニーナ様が私の理想の白鳥姫かというと残念だがそうではない。彼女は髪が黒いし、東洋的な雰囲気を漂わせている。私のイメージでは、白鳥姫の髪は金髪か栗毛色だ。たとえば、往年の美人女優グレース・ケリーや銀盤の女王カタリナ・ヴィットの若いときが白鳥姫のイメージに近い。 ただ勿論、ニーナ様の白鳥姫は素晴らしいの一言に尽きる。 理想の白鳥姫捜しはこれからも続く。

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